
憧れだったツタの絡まる洋館
子供の頃から蔦が壁に絡まる洋館に憧れていました。
昔住んでいた駅前の古いカフェは、コンクリート打ちっぱなしの壁にツタが絡まり、そこだけちがう空間のようでした。
結婚してから駅前にアトリエをオープンし、生徒さんからいただいたナツヅタを植えると、見る間に育ち、7?8年後には私が夢見た駅前のカフェのような、ツタが絡まるアトリエができあがりました。
ナツヅタは初夏に芽吹き、秋には紅葉し、初冬に落葉します。そして葉の散ったあとの壁を這う、茎だけのツタが残るのです。それはいかにも寂しげで、汚い感じさえするのですが、初夏の魔法にかかるように新緑に覆われる瞬間が大好きで、長らくナツヅタとの暮らしを楽しんでおりました。
ナツヅタとの別れと新しい庭

2016年春ごろ、なんとシロアリが発生し、その駆除のため仕方無く外壁のナツヅタや生い茂ったモッコウバラやルリマツリを含む植物すべてを根こそぎ処分することになってしまいました。
私が小さい頃から憧れた景観を、自分の手で壊さなくてはならなくなり、私はとても悲しい思いをしました。ガーデナーの男性が3人がかりで花壇を壊し、絡まった根っこを掘り返し、整地をしてくれました。
アトリエの西側には奥行き7.5m、幅2m弱のスペースがあります。以前は道路側のスペースは自転車を置くために空けてあり、壁にくっつく形で花壇を作っていました。それを今回は壁側を空けて、道路側に花壇を作ることにしました。
2016年9月にガーデンのリフォームをはじめ、土の入れ替えやバラのアーチや素敵な白い水栓をつけてもらいました。ただただ土が入っただけの花壇を眺め、どんな庭にするのか思いを巡らせました。
切り倒したり、抜いたりすることのないよう、木は植木鉢に植えることにし、宿根のローズマリーやラベンダー、シルバーリーフ、ローズゼラニウム、クリスマスローズを植え、空いたところに季節の花を植えることにしました。
季節の花があふれるイングリッシュガーデンに…

バラはつるバラのアイスバーグと、以前の花壇から唯一救出できた黄色のバラを鉢に植えました。
9月?11月に手のひらに乗るほどの小さな苗だったのが、2017年春にはぐんぐん成長し、土が見えなくなるほど立派に成長しました。
ローズマリーやローズゼラニウム、アイビーは、アレンジメントのレッスンの時にカットして使っていただいています。
イギリスのカッティングガーデンを夢見て、また新しい庭造りをはじめました。昨年挿し芽をしたバラやクレマチス、アジサイが根付いて、花を咲かせてくれそうです。
壁に根を張らないクレマチスやバラは「壁に這わせてもいいかな」と思っています。
今年はバラとクレマチスが咲く庭を夢見てガーデニングを楽しみたいと思います。

谷川 文江(たにがわ・ふみえ) 一般社団法人Flower Works Japan 代表理事。FWJ本校であるAtelier F’sを主宰。京都芸術大学芸術学部デザイン科卒業。同大学院芸術研究科修士課程修了。雑貨デザイナーを経てフラワーデザインを国内外で習得。1996年フラワースクール「アトリエフィーズ」を設立。2000年兵庫県西宮市に自らの設計素案・デザインにより、イギリスのゲストハウスをイメージしたフラワーサロンをオープン。2013年フラワーワークスジャパンを設立し、講師の育成にも力を注いでいる。「花とインテリアを通じて暮らしを楽しむ文化を創造する」を理念に幅広く活動中。著書に『切り花を2週間長持ちさせるはじめての花との暮らし』、『狭くても心地良い空間づくり はじめての極小ガーデニング』(共に家の光協会)がある。3児の母。子供たちはみな成人し、定年後カメラマンとして活動する主人と4人暮らし。
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