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モダンローズ&イングリッシュ 誕生と特徴について

モダンローズ&イングリッシュ 誕生と特徴について

前回のコラム(これでよくわかる!ワイルドローズとオールドローズの分類)でワイルドローズから人の手によってオールドローズが生まれたこと、またオールドローズの系統についてお伝えしました。
今回は、私たちが良く目にする「モダンローズ」と「イングリッシュローズ」がどのように誕生したのか、またそれぞれの特徴についてお伝えしようと思います。

モダンローズについて

モダンローズの誕生

モダンローズとは、1867年にフランスの育種家ジャン=バプティスト・ギョー(Jean-Baptiste Guillot)によってハイブリット・ティー(HT)の「ラ・フランス」が作出された後に誕生したバラの総称です。
元々「モダンローズ」とはハイブリッド・ティー(HT)という新しい系統に敬意を表してつけられました。
つまり、ハイブリッド・ティー(HT)の誕生がモダンローズの誕生となったのです。

モダンローズ 「ラ・フランス」

モダンローズの誕生を語る上では欠かせない品種です。
バラの理想とされる「まっすぐ立ち上がる太い枝先に、剣弁高芯の香高い大きい花が定期的に咲く」という姿を具現化した最初のバラと言われています。
花の中心が高く先のとがった花びらを持ち、素晴らしい香りも備えた上、チャイナローズ由来の完全四季咲きとう特徴が画期的でした。
交配親が自然界に存在しない人為的に作られた品種であり、それらを交配し生み出されたのが「ラ・フランス」であり、モダンローズの始まりです。

モダンローズの系統

モダンローズには以下の系統があります。植物園などの樹名板には分類記号で表記されています。

モダンローズの特徴

モダンローズは系統によって様々な特徴があります。

ハイブリッド・ティー(HT)

オールドローズのハイブリッド・パーペチュアル(HP)とティー・ローズ(T)との交雑種から始まる系統。
完全四季咲きで、大輪で1輪咲きのものが多い。
色のバリエーションが豊かであり、20世紀を代表する重要なガーデンローズ。

フロリバンダ(F)

日本のノイバラ(Rosa multiflora)に由来するポリアンサ系(Pol)とハイブリッド・ティー系(HT)などが交雑されて誕生した系統。分類記号(F)を(FL)と表記しているものもある。
中輪房咲きで花数が多く、ガーデンローズとして人気。

グランディフローラ(Gr)

ハイブリッド・ティー(HT)とフロリバンダ(F)系統の交雑によって誕生した系統。
大輪の花を房で咲かせる。
ハイブリッド・ティー(HT)やフロリバンダ(F)とされることが多く、区別しにくい品種もある。

ラージ・フラワード・クライマー(LCl)

ランブラータイプのつるバラとハイブリッド・ティー(HT)やフロリバンダ(F)などが交雑されて誕生した系統。
中?大輪の花を咲かせるつるバラで、四季咲きと一季咲きの品種がある。
アーチやフェンスなどに誘引できるため、ガーデンローズとして人気。

ミニチュア(Min)

コウシンバラ(Rosa chinensis)の‘ミニマ’系統である「ルーレッティー」に由来する系統。
花は小輪で葉も小さい。
樹高が高くならない小型なので、鉢栽培用にされることもある。

ポリアンサ(Pol)

ノイバラ(Rosa multiflora)とチャイナローズの交雑などに由来する系統。
花は小輪で大房咲き。四季咲きで耐寒性に優れた品種が多い。

ミニフローラ(MinFl)

ミニチュア(Min)とフロリバンダ(F)の中間的なグループで、様々な起源のものを含む系統。
「パティオローズ」の別名をもつ。樹形や花の大きさが多様。

シュラブ(S)

どの系統にも属することができない品種がこの系統に入れられる。
近年多くの品種が作出されており、四季咲きから一季咲きまで多種多様。

ハイブリッド・ウィクラナ(Which)

テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)に由来する系統。
大型のつる性で、ほふくするように枝が伸びる。
オールドローズのハイブリッド・ムルティフローラ(HMult)と共に「ランブラーローズ(R)」とも呼ばれる。
ラージ・フラワード・クライマー(LCl)の成立に大きく貢献した。

ハイブリッド・モエシー(HMoy)

ロサ・モエシー(Rosa moyesii)を親とする系統。
ロサ・モエシーの赤紫色の鮮やかな花色で大きな花弁を持つものが多い。
耐暑性が弱い品種が多い。

ハイブリッド・ムスク(HMsk)

ロサ・モスカータ(Rosa moschata)に由来する系統。
多花性で花房が大きい四季咲きの品種が多く、半つる性またはつる性。
ロサ・モスカータのもつムスクの香りをもつ品種が多い。

ハイブリッド・ルゴーサ(HRg)

ハマナス(Rosa rugosa)を交配親にした系統。「ジャパニーズローズ」の別名を持つ。
枝にとげが密生し、革質の照り葉が多く、耐寒性や耐病性に優れる。
ローズヒップはジャムとして市販されている。

ハイブリッド・コルデシー(HKor)

ハマナス(Rosa rugosa)に由来するロサ・コルデシー(Rosa kordesii)をもとにして育成された系統。
ドイツの育種家コルデスにより育成され、耐寒性や耐病性に優れる。
木立性からつる性まであり、ラージ・フラワード・クライマー(LCl)に含まれることもある。

その他

上記の系統以外にも、ランブラー(R)、クライミング(Cl)、クライミングハイブリッド・ティー(ClHT)、クライミングフロリバンダ(ClF)、クライミングミニチュア(ClMin)、グランドカバー(GC)などをモダンローズの系統とするものもある。

イングリッシュローズとは

イングリッシュローズとは、イギリスの育種家デビッド・オースチン(David C. H. Austin)によって作出されたバラの総称です。
オールドローズの個性的で存在感のある花の形や香りと、モダンローズのカラーバリエーションや返り咲き性を併せ持つ、とても人気の高い種類です。
バラ園などでは(ER)と表記されています。そのためモダンローズの系統だと思ってしまいますが「イングリッシュローズ」という系統はありません。モダンローズの系統の中ではシュラブ系(S)に分類されます。

デビッド・オースチン(David C. H. Austin)

1940年代、まだ10代だったデビッド・オースチンはバラの美しさに魅了され、趣味で育種をしていました。
1961年に「コンスタンス・スプライ」という最初の品種を発表し、以降現在に至るまで世界中で称賛を浴びるバラのコレクションを200種類以上作出しています。
デビッド・オースチンはバラの育種において、オールド・ローズ(ガリカ、ダマスク、アルバなど)の芳香と特徴、そしてハイブリッド・ティーやフロリバンダの持つ返り咲き性や色幅の広さを掛け合わせることを重点としています。

1969年にデビッド・オースチン・ロージズ社が創立され、息子のデビッド・オースチン、孫のリチャードが加わり、ファミリービジネスとして現在も続けられています。
大阪府泉南市の「花咲きファーム」にはデビッド・オースチン・ロージズ日本支社が管理するイングリッシュローズガーデンがあります。

デビッド・オースチンのイングリッシュローズガーデン

イングリッシュローズの種類

イングリッシュローズはシュラブ樹形(半つる性)が多く、品種によってブッシュ状やつるバラ、スタンダード・ローズのように使用することもできます。
また香りが豊かであり、「ティー・ローズ」「ムスクローズ」「ミルラ香」「フルーツ香」「素晴らしいオールドローズの香り」の5つのタイプがあります。

イングリッシュ・シュラブ・ローズ

オリビア・ローズ・オースチン
ソフトピンクの美しいカップ型のロゼット咲きの花。フルーティーな香り。

グラハム・トーマス
深みのあるピュアイエローの中輪カップ咲きの花。濃厚なティー・ローズの香り。

デスデモーナ
ピーチがかったピンクのつぼみから、透き通るような白の花を咲かせる。オールドローズ香とアーモンドの花の香り

イングリッシュ・クライミング・ローズ

テス・オブ・ザ・ダーバービルズ つる
明るいクリムゾン色の花。上品なオールドローズの香り。

レディ・オブ・シャーロット つる
深みのあるオレンジレッドのつぼみから、サーモンイエローへと開花。さわやかなティー系の香り。

イングリッシュ・ランブラー・ローズ

スノーグース
大きなスプレーになり、輝くような白い花が咲く。甘いムスク系の香り。

イングリッシュ・スタンダード・ローズ

ハーロウ・カー・スタンダード
ローズピンクの中輪の花。濃厚なオールドローズの香り。

おわりに

ワイルドローズからオールドローズが誕生し、さらに様々な人の手が加わって「モダンローズ」が誕生しました。
また、バラに魅了された少年が、オールドローズとモダンローズの特徴を併せ持つ「イングリッシュローズ」を生み出しました。
長い歴史の中で、たくさんの人のバラに対する愛の結晶が「モダンローズ」と「イングリッシュローズ」です。
バラ園やお花屋さんで様々な「モダンローズ」と「イングリッシュローズ」を見つけてみてください。

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